2024年度理事長 千代海渡
はじめに
みなさん、自分の住んでいる地域は好きですか。
私が住んでいる黒部市は人口4万人の小さな都市です。春には満開の桜が咲き、夏には海水浴や川遊び、秋には美味しい作物を食べ、冬は深々と降る雪と戯れることができます。宇奈月には大自然あふれる黒部峡谷や温泉地があり、生地には365日、24時間、いつでも美味しい水が湧き出ています。娯楽が少ないと思う人にも安心です。北陸新幹線を使えば、東京まで2時間半で行けます。そして、何といっても食べ物が美味しいです。富山湾から水揚げされる新鮮な海の幸、名水で育った艶やかな色をした甘いお米、山には多彩で新鮮な山菜があり、川へ出向けば岩魚が取れ、四季折々の食材が楽しめます。
みなさん、自分の住んでいる地域は好きですか。
産業においては、第1次産業から第3次産業まで幅広い業種があり、失業率はわずか2%に過ぎません。教育においても、勉学に限らず豊かな心を育む取り組みを、行政が一致団結して行っています。
何不自由のない生活とは言えませんが、山・川・海といった自然と触れ合い、子育てにも向いています。そして、働きがいのある仕事も多いです。私はこんな黒部が大好きです。
黒部青年会議所が目指すべき道
公益社団法人黒部青年会議所(以下、JCI黒部)は、「自己を修練し広く友情を求めるとともに、この地を深く愛し、黒部市、宇奈月町そして新川圏域の将来に大きな希望と情熱をもって行動の第一歩を踏み出したい」という趣意書のもと、1978年に新川青年会議所(現、公益社団法人新川青年会議所)より拡大分離し誕生した団体です。JCI黒部も本年で47年目を迎え、先輩たちから継承された志を絶やすことなく、その時代に沿った様々な運動を展開してきました。
しかしながら、昨今の新型コロナウイルス感染症の問題はもとより、人口動態の変化、地球環境の変化、技術革新による様々な影響により、日本だけでなく世界は現在、急激なスピードで変化が起き続けています。まさに現在は「VUCAの時代」と表現される通り、激動(Volatility)で、不確実(Uncertainty)で、それらが複雑(Complexity)に絡み合い、しかも曖昧(Ambiguity)という状態です。簡単に言えば、予測不可能で急激に変化する時代であるとも言えます。では、こんな時代を生き抜くには、どのような組織を目指していくべきなのでしょうか。
私は変化を恐れずに挑戦していく組織だと信じています。なぜなら、このような組織は常に改善・創造・成長を意識し、地域社会のことを第一に考えて行動ができるからです。私はそんな組織を会員とともに目指し、枠に捉われない自由な発想力を駆使しながら、より地域に貢献できる組織となるよう歩み続けて行きます。
1.今、何を考え、どのような行動をすべきか
私がJCI黒部に入会したのは、当時24歳であった2012年のことです。当時は、青年会議所が何をしているのかよく理解していませんでしたし、入会を決めたのも仕事の繋がりからでした。また、会員数が50人以上いたこともあって、「真剣にやる必要はないだろう」という考えから、漠然とした気持ちで活動や運動をしていことを覚えています。そんな私に転機が訪れたのは2年目に委員として所属した、青少年育成委員会でのできごとでした。当時、事業構築が上手くいかず、委員会を開催すれば何も決まらないまま不毛な時間だけが過ぎる状況でした。そんな時、委員長は藁にも縋る思いだったと思います。何かと私を頼ってくれました。それが凄く嬉しくて、誰かのために行動することへの喜びを知るきっかけになったのだと思います。
3年目以降も、何かをお願いされた際には自分のできる範囲で貢献しようと思い行動をしてきました。そうした経験も積み重なり、有難いことに様々な役職や機会にも巡り合い、その結果で今日の自分があるのだと考えています。
今後の自分自身に求めることとして、誰のためにどのような行動をするか、利他の心を大切にし、自分の能力を最大限に使って貢献する人財になりたいと考えています。
2.私たちが取り組むべき「まちづくり」とは何か
「まちづくり」という言葉は誰もが一度は耳にしたことのある言葉だと思います。では、まちづくりの定義をしっかりと理解している人はどれだけいるでしょうか。戦後の復興によって人口が大都市に集中したことにより、公害や生活環境の変化など、生活をするうえで解決しなければならない多くの問題が増えていました。これらの問題の解決を自治体任せにせず、住民自らが声を上げようという動きが見られるようになっていたこともあり、住民の心に訴えかける言葉として、まちづくりという言葉が誕生したのです。まちづくりとは、自治体などが市街地そのものを作る「都市計画」のことではありません。言葉が作られた当初は、ほぼ同じ意味で使われていたものの、その後時代の流れとともに別の意味を持つ言葉に変化しました。まちづくりの定義は、様々な有識者が複数の視点で表現していますが、わかりやすくまとめると「身近な居住環境を改善」し「地域の魅力や活力を高める」ということ。生活の質を高めるために身近な居住環境に対して働きかける持続的な運動のことだということもできます。
まちづくりは長い年月をかけ、街そのものを作り出すことを表す言葉から徐々に意味を広げてきました。ハード面の整備だけでなく、空間や環境の整備、ルール作り、イベントや生業の整備、人と人とのコミュニケーションづくりなど、豊かな生活をする上で必要な整備を全て網羅する言葉になっています。この定義を理解し、私たち青年会議所がやらなければならないことは何かを追求しましょう。それにより、青年会議所が掲げる「明るい豊かな社会」を実現するための一歩となることでしょう。
3.次世代を担う青少年にこそ、成長の機会を提供したい
現代社会において、若者が社会の中心になる未来を担っていくことはますます重要となっています。そこで、青年会議所では若い世代の育成と支援を行うことを使命としており、その中でも特に重要なのが青少年事業です。青年会議所が青少年事業を行う理由は、若者が社会の中心になる未来を担うことが重要であるという考えに基づいています。若者は将来的に、経済や政治、文化など、社会的なあらゆる分野において大きな責任を担うことになります。我々が若い世代を支援し、育成することは、社会全体の発展に直結していると考えています。
では、私たち青年会議所はどのような青少年事業を行えば良いのでしょうか。青少年事業と言っても多種多様な手法があります。事業構築を進めていく上で、何をしようか、対象は誰なのかという議論がよく交わされます。そういった点も重要ですが、一番重要視してほしいことは「青少年が何を想い、何に悩んでいるのか」ということです。青年会議所の会員は青年と呼ばれる世代が多いことから、青少年の感情を直接理解することは容易ではありませんが、今はありとあらゆる情報を取得できる時代です。データに基づき、若者の未来につながる様々な利益を考え、これからも青少年に成長の機会を提供し続けていくことが必要であると考えます。
4.青年会議所で得た学びを企業の発展につなげよう
青年会議所に所属する会員区分は、日本青年会議所の情報によると約76%が経営者もしくは次世代を担う経営陣、約11%が管理職となっています。しかし、私が入会した当初は青年会議所内での仕事の話はタブー視されていました。理由は青年会議所内で利害関係を持ち込んではいけないということです。当時はそういうものなんだろうと、少し疑念を抱きながらもどこか納得していたように思います。しかし、冒頭に記載した通り、現在はVUCAの時代と呼ばれており、社会情勢や市場環境が常に変化している中で企業もその変化に柔軟に対応する能力やスピード感、イノベーション、リスクマネジメントが重要となっています。
青年会議所は、古くより社会貢献や経営・リーダーシップの学びを通じて、会員の成長を促進する活動が行われています。青年会議所活動や運動に参加することで、ビジネスにおいてネットワークの拡大が期待できます。多様な業種・専門分野の会員と出会い、交流することで、新しいビジネスチャンスを見つけたり、新しいアイデアを得ることができます。また、ビジネスに必要とされるリーダーシップ能力やコミュニケーション能力を磨くことができる機会が数多くあり、個々の能力が向上することで、企業や地域社会にとってかけがえのない人財となります。
5.何事にも関心を抱き、前向きな行動ができる人財を育てよう
全国的にも会員減少が顕著となっていますが、私たちJCI黒部も同様に減少傾向にあります。2019年には40名いた会員も、2024年度には23名でのスタートとなります。これまで様々な役職を経験してきたベテラン会員も2023年度で多く卒業されました。ここで伝えたいのは、会員減少やベテラン減少は決して悪いことだけではないということです。もちろん、会員減少による事業費の縮小や事業に対する人手不足はデメリットとなりますが、小さなコミュニティーだからこそ迅速な対応力を発揮することができ、これまで漠然と守ってきたルールを良い意味で変革できる組織力も備わると考えています。このような時だからこそ「少数精鋭の精神」で変えるべきことは変え、良いことへは積極的にチャレンジしていくべきです。
そして、今後の青年会議所活動や運動を展開するためには、組織と意識の両面で変革が必要です。県内の他LOMでも公益社団法人を維持しているのはJCI黒部を含めて4LOMとなっており、公益性に捉われない自由な発想での運動が求められています。事務局を保有する私たちにとって、法人格移行は困難な道になるかもしれませんが、未来を担う後輩たちのためにも、組織変革を行います。そのためにも、会員の意識変革も不可欠です。私たちJCI黒部の存在意義の一つは「地域の発展や繁栄に寄与する人財の育成」です。
この目的を果たし続けるためには、楽しみながら前向きな行動ができる人となり、外部から頼られるような魅力的な人財に成長していきましょう。
結びに
青年会議所の理念には「修練」「奉仕」「友情」という3つの信条があり、これらの信条に従って、より良い社会づくりを目指しています。私自身も「友情」の大切さを青年会議所で学びました。人との繋がりが自分の人生を豊かにし、支えになることを感じています。今、私たちは地域の課題やニーズを深く理解し、何を求められているのかを考え、行動することが重要です。
この目的を達成するためには、自己研鑽を欠かさず、日々の努力が必要です。また、多くの人との交流を促し、友情を育むことが重要です。このような行動が人々の心や地域社会を明るく豊かにすることを信じ、取り組んでいきたいと思います。
スローガン
L I B E R T Y
枠にとらわれない、自由な発想を。
基本方針
1 地域の魅力や活力を高めるまちづくりの実施
2 未来を担う青少年の成長を考えた青少年事業の実施
3 企業の発展を中心とした人財育成事業の実施
4 枠に捉われず前向きな行動ができる会員育成の実施
5 未来を見据えた組織変革の実施
6 全員拡大の実施